からあげライターの“から活”レポート

からあげをこよなく愛する、からあげライターの“から活(=からあげ活動)”レポートです。

小説を書くときは「情景描写」「心理描写」「比喩」をよく用います。 

 

これらは主人公や登場人物の視点で用いられることが多いのですが、食レポの場合はどうでしょう。 

 

情景描写では“見ため”を表現します。お店のロケーションや外観、店内の様子、店員さんの様子、そして料理の見ため。情景描写というより、状況描写といったところでしょうか。 

  

「●●駅から徒歩数分。片側2車線の大通りを歩き、左に折れて小さな路地を歩くと、町家を想起するような趣あるたたずまいの店が見える。紺色の暖簾に書かれた『○○屋』という白抜き文字」 

 

「カウンター5席、4人掛けのテーブルがふたつ。夜は居酒屋になるようで、店内には日本酒や焼酎の一升瓶がズラリと並ぶ」 

 

「店を切り盛りする高齢のご夫婦が笑顔で迎えてくれた」 

 

「からあげ定食をオーダーすると、カウンター越しの厨房から突然降りだした豪雨のような音。かなり高温で揚げているらしい。肉の中の水分が一気に放出されているようだ」 

 

「生姜の香りとともに登場したからあげ定食。付け合わせの千切りキャベツとともに、皿の上に豪快に盛り付けられた大きめのからあげが5個。パソコンのマウスほどもあろうかというジャンボからあげだ。衣がやや焦げているようにも見える」 

 

などなど。視覚、聴覚、嗅覚を動員して、気付いたことはすべて描写してみます。 

 

しつこいくらいに描写してみて、余計な描写はあとで削除すればよいだけ。 

 

食べたときの味や食感も、味覚や触覚が感じ取った状況と言えるので、この状況描写にも該当しますね。 

 

「やや固い衣だが、歯を立てると一気に崩れる。焦げたところが香ばしい。肉は逆にクッションのようにふわりと柔らかい。肉汁が歯の圧で押し出されてくる。生姜の風味が強い」 

 

味については個人の好みも関係してくるので、いろいろな表現が出てきて面白いでしょうね。私は衣のおこげが好きなので、香ばしさを表現することがどうしても多くなってしまいます。

食レポは五感をフル動員しておこないます。 

 

味覚や嗅覚は当然ですね。では視覚や触覚、聴覚はどうでしょう?私の大好きなからあげを例に述べてみましょう。  

 

視覚は見ための感想を述べるもの。からあげを「こんがりキツネ色」なんて表現することもありますね。ときには白いからあげや黒いからあげ、赤いものもあります。  

 

揚げすぎて焦げているからあげを「石炭かよ!」と言ってしまったことがあります。 

 

盛り付けも視覚ですね。山盛りのからあげを「ピラミッド」とか「槍ヶ岳」と表現してみたり。うまく食べ進めないと「雪崩」や「崩落事故」を起こすぞ、とか。 

 

触覚は唇触り、歯触り、舌触りはもちろんですが、箸でつまみ上げたときの感覚も表現の対象になります。とてもひと口では食べられないようなジャンボからあげを箸で持ち上げるとこれがズッシリ重い。「これを毎日食べていたらいい筋トレになりますね」なんて。 

 

聴覚では歯で噛んだときの音など。からあげの場合、いろんな擬音語を活用しますね。「外はカリッ!」という表現はよく目にします。これはからあげの衣の食感を表現したもので、それ以外にも「シャリッ」「ジャリッ」「ガリガリ」「ザクザク」などもあります。衣に使う粉によって衣の食感が変わります。餅粉を使っている場合は「モチッ」というのもありますね。 

 

厨房での揚げ音が聞こえてくることもあり、それを表現することも。思いっきり高温で揚げてるなーと思ったときは「いきなり夕立ちが来たかと思った」と言ったこともあります。 

 

五感を活用した表現は、これ以外にもいろいろあるはずで、もっと伝わりやすく親しみが持てる表現を模索していきたいと思います。

「文学」と言うと何ともおこがましいのですね。 

 

食レポは、レポートする人が五感をフル動員しておこないます。味覚だけではなく、視覚も嗅覚も活躍します。触覚も聴覚も使います。 

 

またその人が、それまでどんな食生活を送ってきたのか、どういう食文化の中で育ったのかということも影響します。 

 

自分のみが体験していることを、言葉で誰かに伝えなければならない作業であり、語彙力や表現力も試されます。 

 

ちょっとおこがましいけれど、こんな意味で「文学」のひとつと言っても、まあいいんじゃないでしょうか。 

 

ときには小説のように、ときには詩を書くように食べたときの感想を綴るのもいいのではないでしょうか。 

 

情景描写(料理の見ためや食感、香りなど)、心理描写(食べてどんな気持ちになったか)、そして比喩(わかりやすく伝えるため)。  

 

映像や写真を使ったメディアが未発達だった時代は、活字メディアが中心。人々は小説などを読んで、いろいろなことをイメージしたでしょう。人の想像力をかき立て、食べたものの感想を伝える手法として文学的なアプローチもありかもしれません。 

 

 いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが目前に迫ってきました。メインスタジアムとなる国立競技場周辺は整備・開発が進み、新しいショップや施設が登場しています。 

 

 その国立競技場から徒歩で6~7分ほど歩いた路地裏に、カラアゲニストとしては見逃せないお店を見つけてしまいました。その名も『もつ鍋 旦過』。北九州・小倉出身のご主人のお店です。 

 

 九州、中でも福岡の料理が味わえるのですが、カラアゲニストとしてはこちらの「【豪】からあげ」がオススメ。鶏の半身を豪快に使ったからあげです。 

 

 オーダーから20分ほどで登場したからあげ、たしかにデカい!見るからに食べ応えがありそう。 

 

 鶏の半身揚げを出すお店は首都圏に多数存在しますが、こちらはちょっと違います。通常はモモ肉、ムネ肉、手羽、手羽元、ササミの5部位が提供されますが、ここではさらにセセリ。ボンジリまでついてきます。 

 

 さっそくいただくと、ジャリッ!としたこれまた豪快な音が。しっかり揚がった衣です。肉はほんのりしょっぱく、これが食欲をそそること…。 

 

 2~3人でシェアして食べるサイズですが、あまりの美味しさに無我夢中で食べてしまい、あっという間に完食してしまいました。骨もバリバリと食べてしまえるやわらかさ。もう脱帽です。 

鶏の素揚げを提供するお店が増えています。普通のからあげとは違う美味しさのある素揚げ、その魅力とは何でしょうか。 

 

素揚げとは文字通り、小麦粉や片栗粉などの衣を付けずに油で揚げる調理法です。衣を付けて揚げるからあげとは少し異なります。鶏肉に限らず、野菜や魚を素揚げにするケースもありますが、ここでは鶏肉に限定してお話ししましょう。 

 

素揚げの魅力~その1~ 

低カロリーであること 

衣を付けないということは、小麦粉などのいわゆる「糖質」を使っていないということです。当然その分、低カロリーでヘルシーということになります。 

 

素揚げの魅力~その2~ 

肉の美味しさが増すこと 

衣を付けずに揚げると、肉に含まれる水分が抜けやすくなります。余分な水分が抜けることで肉のうま味をより強く感じることができます。また飲食店などで提供されている素揚げのほとんどは塩のみで味付けしています。しょうゆやニンニク、ショウガなどで味付けしたからあげよりも肉本来のうま味を十二分に楽しめるのです。 

 

素揚げの魅力~その3~

色々な部位の味を楽しめること 

飲食店で提供されている鳥の素揚げはほとんどが「半身」です。モモ、ムネ、手羽、ささみなど、味わいの異なる部位を一度に楽しめるのです。 

 

素揚げの魅力~その4~

骨付きであること 

半身だと骨が付いています。食べにくいと思うこともあるでしょうが、肉は骨の近くのほうが美味しいのです。骨に含まれる髄液にはうま味の成分が含まれているため、骨の周辺は骨から遠い部位よりもうま味が強いのです。 

 

素揚げの魅力~その5~

味のごまかしがきかないこと 

前述の通り、素揚げは塩のみで味付けしていることがほとんど。しょうゆやニンニクなどで味をごまかすことができないのです。そのため調理人の腕、下処理の仕方や揚げ方などがストレートに反映されます。素揚げが美味しいと思えるお店の調理人はかなりの腕と言えるでしょう。 

 

 

オススメ鶏素揚げのお店


鳥房


とよ田


うえ山


丸鶏るいすけ


鶏半身素揚げ 和バル あがれ


てっぺん 渋谷 女道場

鶏のからあげはみんな大好き。私はこれまで「からあげが嫌いだ」という人に出会ったことがない。「鶏肉は苦手」とか「揚げ物はダメ」という人はいたが、ピンポイントでからあげ嫌いを表明した人はいない。そして今後も出会うことはないだろう。 

 

お弁当屋では、からあげ弁当は人気メニューになっている。居酒屋でも人気のおつまみだ。からあげは子どもにも大人気である。なぜこうまで、人はからあげを好むのか? 

 

からあげの人気の秘密を考えてみた。味か?香りか?食感か?肉のうま味か?調理法か?いろいろ考えたがよくわからない。味覚の問題なので理屈では説明できないのかもしれない。考えること自体に無理があるのかもしれぬ。 

 

そこで私はひとつの仮説を立ててみた。 

 

からあげ人気は、その味などではなく“記憶”の問題なのではないだろうか。どういうシチュエーションでからあげを食したか思い出してほしい。日常的に(白飯並みに)食していただろうか? 

 

からあげはお弁当のおかずに登場することが多い。揚げ物は傷みにくいからという理由もあるだろうが、味がしっかりついたからあげは冷めても美味しく食べることができるのもそのひとつ。 

 

ではお弁当はどんなシチュエーションで食べていただろう。給食のない学校などに通っていた人はそれこそ毎日お弁当を食べただろう。その場合、毎日からあげが入っていただろうか?日常的なシーンでのお弁当にからあげが登場することはそうそうなかったのではないだろうか。 

 

むしろ遠足や運動会など、特別なシーンでのお弁当には主役のように登場していたのではないだろうか。母親が気合いを入れて作ってくれたお弁当。さまざまなおかずが彩りも鮮やかに盛り付けられた箱の中に、ひときわ輝いているからあげ。楽しい遠足や運動会をひっそりと盛り上げる名脇役と言ってもいいかもしれない。弁当箱のふたを開け、からあげが目に飛び込んできたときの高揚感。私は忘れない。逆にからあげが入っていなかったときの失望といったら…。 

 

またからあげは大勢でシェアして食べることができる。子どものころのお誕生会やちょっとしたパーティーなどでからあげは必ずと言ってよいほどに提供されていたと思う(大量に調理しやすいということもあると思うが)。 

 

そのように、特別なシーン、楽しいときの記憶とリンクしているのがからあげの味なのかもしれない。 

 

食べるたびに楽しい記憶とリンクして楽しくなる。かく言う私も、からあげを食べて嫌な気分になったことはない(マズいからあげを食べたとき以外は)。からあげを食べると楽しい感覚がよみがえり、また食べたくなる。それがからあげなのかもしれない。 

 

これはあくまでも私の仮説である。 

 

さて、この仮説をどうやって立証すればよいやら…。

9月30日に発売された『からあげパーフェクトブック2020』(日本唐揚協会監修)。 

 

私も下記の取材・ライティングを担当させていただきました。 

 

■からあげ探訪~中津・宇佐~  

■東京からあげオールスター 


都内の美味しいからあげ屋さんをご紹介しています。 

ご興味ございましたら読んでやってください。 

 

ぜひ一家に一冊!いや、ぜひ一人に一冊! 

中津の取材でご協力くださった皆さん、ありがとうございます!

『元祖からあげ天・豪徳寺店』特製チキン南蛮・特製もも肉からあげ

 

骨なしミックスはモモ肉とムネ肉のからあげ(写真は200g)

 

 小田急線豪徳寺駅の改札口を抜け、通りに出るとすぐに目に飛び込んでくるのは「からあげ専門店 からあげ天」の看板。こちらはテイクアウト専門のからあげ屋さんです。鶏肉文化圏として名高い大分県に本店を持ち、オーナーがからあげの聖地・中津の名店で修行して、その味を再現したという逸品を食べることができます。 

 

 持ち帰りのものばかりですが、メニューも豊富。一番人気の「骨なし」(100g・270円)のほか、手羽先や軟骨、パリ皮、ビッグモモというもも肉を豪快に使ったものまであります。お弁当もあるので、ランチタイムは大変混み合うお店です。 

 

 さてこちらで筆者がいただいたのは骨なしミックス。モモ肉とムネ肉のからあげを楽しめるものです。オーダーから5~6分後に、揚げたてのアツアツからあげが出てきました。片栗粉に馬鈴薯でん粉をブレンドしてある衣はカリカリ食感。歯を立てると「カリリ…」という音が聞こえます。この音がいい。からあげを食べている気分を増幅させてくれます。 

 

 門外不出の秘伝のタレに漬け込んだ肉はやわらかくジューシーな食感。漬け方にこだわっているそうで、味のしみ込み方や肉質がやわらかくなるための最良の時間を研究してきたのだそう。 

 

 衣を突破し、肉を噛んだ瞬間、思わず「熱ッ!」と叫んでしまいました。揚げたてなので熱いのは当然ですが、その“真犯人”は肉の熱さではなく肉汁。肉のうま味が溶けだしたアツアツの肉汁が口の中になだれ込んできます。ハフハフ言いながら一気に完食しました。 

 

 ところで驚いたのは、ムネ肉のやわらかさ。モモ肉とムネ肉、両方味わったのですが、どちらがモモ肉なのかわからなくなるほどに濃厚な味に仕上がっています。ムネ肉の味はたんぱくで食感もパサパサしているイメージですが、このからあげにはそれはなし。タレへの漬け方など、ムネ肉をやわらかくジューシーに仕上げるための研究はからあげの本場ならでは、といったところでしょうか。 


『チキン南蛮専門店 ろくどり』特製チキン南蛮・特製もも肉からあげ

 

チキン南蛮・特製と秘伝の唐揚げ。通常はパックに入れてのテイクアウトのみ。 

 


 もはや珍しくなくなったからあげの専門店。しかしチキン南蛮の専門店はちょっとレアなのではないでしょうか。京王線八幡山駅の改札から徒歩数十秒にある『チキン南蛮専門店 ろくどり』は、今年でオープンから4年目をむかえるテイクアウト専門のお店。お弁当の販売もおこなっているので、お昼どきには周辺のビジネスマンや学生などで行列ができるお店です。 

 

 こちらのチキン南蛮(単品)は、いずれもモモ肉を使用していますが、タルタルソースを特製、和風、ピリ辛、チーズの4種類から、個数は4個 or 6個から選べます。筆者は「もも肉4個・特製」(580円)をセレクト。 

 

 チキン南蛮は甘酢とタルタルソースが命。こちらの甘酢は大正11年創業の私市醸造の黒酢に玉ねぎの甘みを加えて作った甘黒酢。タルタルソースは玉ねぎや卵との相性を研究して試行錯誤を繰り返して作ったものだそうです。期待に胸ふくらませてさっそくいただきます。 

 

 タルタルソースはあっさりながらもコクがあります。甘黒酢の濃厚で深みのある味との相性はGoo! 甘味と酸味に、フワッとやわらかい肉から出てくるうま味たっぷりの肉汁にからんで美味しさ倍増。チキン南蛮の醍醐味は、この三位一体の美味しさです。それぞれのバランスがよく、普通のからあげを食べるよりも、飲み込む瞬間にのどの手前にグワッと広がるさわやかな風味がクセになりそうです。 

 

 一方「秘伝の唐揚げ」(5個・580円)は、その名の通り、秘伝のタレに漬け込んだ、ニンニクの風味豊かなからあげ。サクサクした衣は箸でつまんだだけで「カリ!」っという音が。歯が突き破るとニンニクの香りがじわ~っと攻めてきます。決してガツンと来ないニンニクの香り、鼻から抜けていく感じがこれまたさわやか。飲み込んだあともしばらくこの余韻を楽しめます。 

 

 単品以外ではチキン南蛮丼や串に刺さったチキン南蛮棒もおすすめ。これは地元の人々に愛され、行列ができるのもうなずける美味しさです。 

『ジョニーのからあげ・池袋店』骨なしからあげ盛り合わせ・モモ一本揚げ

 

骨なしからあげ盛り合わせ。左3個がムネ肉、右3個がモモ肉 

 

『ジョニーのからあげ』といえば、関西を中心に店舗を展開する、カラアゲニストなら誰もが知る名店。9回実施されている〈からあげグランプリ〉で最高金賞を4回、金賞を4回受賞している実力店でもあります。今回はその池袋店へ。モモ肉とムネ肉のからあげを味わえる「骨なしからあげ盛り合わせ・小」(650円)と「モモ一本揚げ」(780円)をオーダーしました。 

 

 こちらでは10種類以上のスパイスをブレンドしたしょうゆベースの秘伝のタレに4日間も漬け込んでいるため、味がしっかりとついており、香りも抜群にいい!運ばれて来ただけで芳醇なしょうゆの香りにノックアウトされそうです。この香り、空腹時に嗅いでしまうとかなりヤバい(笑)。とめどなく食欲がわいてきます。盛り合わせはまずムネ肉からいただきましたが、歯を立てただけでうま味がグッと押し出されてくるようです。パサパサ感はゼロ。むしろプヨプヨしたやさしく軽やかな食感です。味が十分しみ込んでおり、あっさりながらも満足感のある美味しさ。これまでいろんなお店でムネ肉からあげを食べてきましたが、こちらのものが一番! 

 

 鶏肉は、やわらかい肉質が特徴の鹿児島産ハーブ鶏を生肉で使用しています。モモ肉はプルプル食感で、うま味・肉汁ともに文句なし!カリカリ系の衣とのバランスもよく、うま味×肉汁×カリカリ衣がやわらかい肉と一緒になって、口の中がカーニバル状態。もう何個でも食べたくなるほどです。 

 

 モモ一本揚げは、これまたカリカリ衣にやわらかい肉が特徴。肉はプリンとした食感で、肉汁と一緒に舌の上をすべるよう。肉のうま味としょうゆの風味が、飲み込む寸前にのどのあたりにフワッと広がります。いずれも濃いめの味付けですが、辛いわけではありません。上品な濃さ、という印象です。 

 

モモ一本揚げ。あまりの美味しさに“むしゃぶりついて”しまいます 

 

 ジョニーのからあげは、昼はお弁当も販売しています。濃い味付けのからあげは冷めても美味しいので、ぜひ味わっておきたいところです。