食レポ文学③

小説を書くときは「情景描写」「心理描写」「比喩」をよく用います。 

 

これらは主人公や登場人物の視点で用いられることが多いのですが、食レポの場合はどうでしょう。 

 

情景描写では“見ため”を表現します。お店のロケーションや外観、店内の様子、店員さんの様子、そして料理の見ため。情景描写というより、状況描写といったところでしょうか。 

  

「●●駅から徒歩数分。片側2車線の大通りを歩き、左に折れて小さな路地を歩くと、町家を想起するような趣あるたたずまいの店が見える。紺色の暖簾に書かれた『○○屋』という白抜き文字」 

 

「カウンター5席、4人掛けのテーブルがふたつ。夜は居酒屋になるようで、店内には日本酒や焼酎の一升瓶がズラリと並ぶ」 

 

「店を切り盛りする高齢のご夫婦が笑顔で迎えてくれた」 

 

「からあげ定食をオーダーすると、カウンター越しの厨房から突然降りだした豪雨のような音。かなり高温で揚げているらしい。肉の中の水分が一気に放出されているようだ」 

 

「生姜の香りとともに登場したからあげ定食。付け合わせの千切りキャベツとともに、皿の上に豪快に盛り付けられた大きめのからあげが5個。パソコンのマウスほどもあろうかというジャンボからあげだ。衣がやや焦げているようにも見える」 

 

などなど。視覚、聴覚、嗅覚を動員して、気付いたことはすべて描写してみます。 

 

しつこいくらいに描写してみて、余計な描写はあとで削除すればよいだけ。 

 

食べたときの味や食感も、味覚や触覚が感じ取った状況と言えるので、この状況描写にも該当しますね。 

 

「やや固い衣だが、歯を立てると一気に崩れる。焦げたところが香ばしい。肉は逆にクッションのようにふわりと柔らかい。肉汁が歯の圧で押し出されてくる。生姜の風味が強い」 

 

味については個人の好みも関係してくるので、いろいろな表現が出てきて面白いでしょうね。私は衣のおこげが好きなので、香ばしさを表現することがどうしても多くなってしまいます。

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